中小企業・小規模事業者の経営者のうち、65歳以上の経営者は全体の約4割を占め、今後数年で、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えることとなります。
これら中小企業・小規模事業者は、雇用の創出や新しい技術の開発など、地域経済のけん引役として、我が国の経済・社会において重要な役割を果たしています。
取引先とのつながり、経営に関する様々なノウハウ、従業員など経営資源を守りながら、中小企業・小規模事業者が社会基盤の担い手として活躍していくためには、将来を見据えた計画的な事業承継が欠かせません。中小企業・小規模事業者が今後も事業を継続・発展させていくために、次世代へスムーズに「事業承継」を勧めることが求められているのです。
小諸・上田・佐久の各商工会議所内に、「東信ビジネスリレーセンター」を創設し、広域でのビジネスマッチングやご相談受付にも対応できるようにいたしました。
事業承継では、後継者教育などを進めながら経営権を引継ぐ「人(経営)」の承継、自社株式・事業用資産、債券や債務など「資産」の承継、経営理念や取引先との人脈、技術・技能といった「知的資産」の承継を、計画的に着実に進める必要があります。
事業承継をスムーズに進めるためには、自社株式の取得に伴う相続税や贈与税の負担、経営権の分散リスク、事業承継後の資金繰りなど、様々な課題に対応していくことが求められます。
事業承継の根幹のひとつとして、自社の経営理念を承継することの重要性を忘れてはなりません。
いわゆる老舗企業では、時代が変わっても受け継いでいく想いを大切にしている例が多く見られます。このことは、資産や経営権のみならず、会社の理念や経営者の想いを伝承することの重要さを示しています。
その意味でも、事業承継を見据えて、経営者が過去から現在までを振り返りながら、経営に対する想い、価値観、信条を再確認するプロセスは、事業承継の本質といえます。
可能であれば明文化し、後継者や従業員と共有しておけば、事業承継後もブレることのない強さを維持できるでしょう。
ステップ① 事業承継の準備の必要性を認識
従業員の雇用や、取引先との信頼関係など、会社が周囲にあたえる影響は小さいものではありません。
引継ぎといっても経営者の身内だけの問題ではないことをあらためて理解しておく必要があります。
後継者を次期経営者として必要な能力を備えた人物として育成することは、一朝一夕ではできません。
また、事業用資産や経営資源の承継も十分な時間を取って計画的に進めていく必要があります。
事業承継を着実に進めるためには、早めの着手が肝要です。
ステップ② 経営状況・課題を「見える化」
未来に向けて経営方針を定める必要があります。その最初の一歩は、会社の経営状況を把握することです。
事業をこれからも維持・成長させていくために、利益を確保できる仕組みになっているか、商品やサービスの内容は他社と比べて競争力を持っているかなどを点検しましょう。
ステップ③ 事業承継に向けて会社を「磨き上げ」
企業価値の高い魅力的な会社とは、どのようなものでしょうか。一つは、他社に負けない「強み」を持った会社。
もう一つは、業務の流れに無駄がない、効率的な組織体制を構築した会社です。
自社が強みを有する分野の業務を拡大していくとともに、各部署の権限、役割を明確にして業務がスムーズに進行する事業の運営体制を整備しましょう。
ステップ④~⑤ 事業承継の計画策定から実行まで
経営の「見える化」、会社の「磨き上げ」を進める過程で明らかになった経営上の課題を解消しながら、後継者と二人三脚で策定した事業承継計画、あるいは希望に適った相手とのマッチング条件に沿って、資産の移転、経営権の移譲を進めていきます。
早めに専門家に相談することも有効です。